ダンパーとスプリングについて。(その2)

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スプリングが選択出来たら、次はダンパー(減衰力)の選択です。
ダンパーには大きく分けて2種類あります。
ツインチューブ(複筒式)とモノチューブ「シングルチューブ」(単筒式)です。
当然、どちらにもメリットとデメリットがありますが、弊社の考えの中で最もデメリットが少ない構造を選択しました。
弊社は、「単筒式」を採用しています。
更に、「別タンク」を採用する事で、ガス圧を「複筒式」と同等まで下げる事が出来ます。
ガス圧が低く、突き上げが少ない「単筒式」です。
単筒式は、ダンパー内部のオイル室とガス室が完全に分離している為、複筒式(別タンク式は除く)に起るキャビテーションの心配が要りません。
キャビテーションとは?
簡単に説明しますと、ダンパー内部でオイルとガスが混じり合い、泡立ってしまう現象です。
複筒式ですと、ほぼ間違いなく100%キャビテーションが起ってしまいます。(別タンク式は除く)
キャビテーションが起きると、瞬間的に減衰力が発生せず、曖昧な動きになってしまいます。
特にサーキット等の高速コーナーでは、不安定になりがちです。
単筒式は微細な動きでもしっかりと減衰力が発生します。
レース用の複筒式ダンパー(特にカートリッジ等)は、キャビテーションが起きても減衰力をキープする為、低速域の減衰力を大きくしているモノが多いです。
これが、今迄「レース用は乗り心地が悪い」と言われてた原因の一つでもあります。(他にも原因はありますが割愛させて頂きます。)
単筒式では、必要最小限の減衰力でスプリングをコントロール出来るので「乗り心地が良い」という副産物を生みます。

ダンパーは、あくまでもスプリングの動きをコントロールするものです。
減衰力変更は、ロール量のコントロールではなくロールスピードのコントロールです。
ロールが大きいからといって、減衰力で補うという考えはNGです。
但し、S字の切り返し等では、ロールスピードを遅くする事で最大ロールまでストロークする前に反対側へ加重が移動するので、減衰力をカタくする事で実質的にロール量が減ります。

大まかな減衰力が決まったら、実際に走行しながらセッティングしていきます。
減衰力固定式のダンパーであれば、車高の調整やアライメントの調整を行いますが、ここでは減衰力調整式ダンパーを使用している事を前提とした、減衰力の調整についてお話しします。

つづく。

ダンパーとスプリングについて。(その1)

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*長文になりますので分割してアップしていきます。

足廻りをチューニングする際に変更するパーツとして、主にスプリングとダンパーが挙げられます。
スプリングの役目は、車体の重量を受け止める事です。
コーナリング時のロール量やブレーキング時のノーズダイブ量、アクセルオン時のリフト量を決めます。
細かく言うと、コーナリングはスタビライザーも関係しますが、ここでは割愛させて頂きます。
車高は、そのスプリングを受け止める「スプリングシート」の位置によって決まります。
そして、ダンパーはスプリングの動きをコントロールするパーツとなります。
ダンパーの減衰力を決定する際、スプリングが決まらないと全てやり直しとなってしまいます。

チューニングするに当たって、まず最初に必要なのが「スプリングの選択」です。
スプリングを選ぶ時に必要なのが、自由長(スプリング自体の長さ)とレート(スプリングのカタさ)です。
まずは、参考となる車種や実績から自由長とレートを仮選択します。
この時に注意するのが、そのスプリングの有効ストロークです。
あまり短いスプリングを使用すると、線間密着を起こしてしまいます。
そこで、簡単な計算の仕方を記します。
その車両の「(1輪加重÷バネレート)×2.5」を基準にすれば、おおよそ大丈夫でしょう。
例えば車検証のフロント加重が600kgの車両とします。
使用したいレートが8kgfの場合、(300÷8)×2.5=93.75となります。
ですから、最低でも94mmのストロークがあるスプリングを選んで下さい。
(スプリングストロークが表示していない場合は、自由長から線径×巻き数『密着長』を引いて下さい。線間密着までのストロークが割り出せますよね。)
では、ストロークがあればオッケーか?と言うと、違います。
今度はスプリングの密着長とロアシートの位置関係を見なければなりません。
選択したレートを使って希望の車高にした時、スプリングロアシートの位置からスプリングの密着長を足して下さい。
この時に、ダンパーケース上端からスプリングの密着時上端があまり突き出ない事が望ましいです。
突き出し過ぎるとダンパーストロークが残っているにも関わらず、スプリングが線間密着となる可能性があります。
逆に低すぎると、スプリングストロークはあるのにダンパーストロークが無くなってしまいます。(この場合、ダンパーケースのショート加工が必要になってきます。)

理想は、ダンパーストロークよりスプリングストロークがあって、ダンパーストロークとタイヤストロークが同等。
但し、状況によっては変化しますので(ツインスプリング等)、あくまで基本的な考えとなります。

つづく。

AE86-Rr コイルオーバーテスト途中経過

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まず、コイルオーバーのメリットとしてスプリングレートの選択幅が広い事が挙げられます。
現在はハイパコの8インチ6.3kgf をセットしています。
車高は、装着前(TRD-5.1kgf + 10mmスペーサー)と同じ位です。
スプリングプリロードは0にしてあります。
この状態で、あと15〜20mm車高を下げる事が出来ます。
ストリートでの使用を考えると、長さはこの位でジャストだと思います。
但し、あくまでも「レース専用部品」としてラインナップ予定ですが、、。

フィーリングですが、TRD-5.1kgf よりもスプリングレートは上がっていますが乗り心地は悪くありません。まだストリートのみの走行ですので乗り心地程度しか判りません、、。
ただ、スプリングの装着位置が純正位置よりも外側にくるので、レバーレートが少なくなっているにもかかわらず(純正位置だと7kgf位の感じでしょうか?)よく動いているのが判ります。
純正形状スプリングにありがちな、ステアリングがフルロック状態で段差を越えたりした時の
「ゴリンッゴリン」といった音も出ません。
つまり、ストレスなくホーシングが動いているという事です。

ホーシングタイプの車は、ある意味コーナリング中にキャンバー変化が無い究極の足回りと言えます。常に両輪を地面に対して垂直に接地させる事が出来れば、タイヤの最大グリップを引き出せます。
デメリットとしては、重いホーシングをぶら下げていて、バネ下重量が重い!(荒れた路面に対して追従性が悪い。)
左右のタイヤが連結されているのでイン側の影響をアウト側が受けてしまう!(頑強なスタビが入っている様な感じですね。)サーキットですと、ゼブラ等のインカットの際に姿勢が乱れてしまいます。
その他色々と問題はありますが、割愛させて頂いて、、。

ではどうすれば良いのか?
デメリットを消して行く方向でセッティングするのが良いと思います。
ホーシングをストレス無く、動きたい時に動きたい方向に(横方向は動きを押さえたいですが!)動かしてあげれば確実にトラクションは上がります。
伸び側(イン側)のストローク管理も重要になってきます。(ストリートですと有効ストローク100mmは欲しいですね!)

全長調整式コイルオーバーは、デメリット対策の一つの方法としてかなり有効という事です。
純正形状に比べて、セッティング幅も異常に広いです。
更に、ダンパーが単筒式ですので熱に強く、微低速域からしっかり減衰してくれます。

電気デバイス等でトラクション管理が当たり前の時代でも、アナログながら旧車は更に進化し続けます。

つづく。

AE86-Rr車高調整ダンパー テスト開始!

AE86のN1レースでは、別タンクが装着出来ません。
レギュレーションなので仕方ないですが、理由が謎です、、。
そこで、コストは上がってしまいますが、N1レース対応として直列別タンクの全長調整式を製作してみました。(信頼出来るレース屋さんにテストを依頼しました。)
同時にコイルオーバー式全長調整車高調整もテストを始めました。
こちらはアッパーシートをちょっと工夫して、ボディー補強無しで営業車のAE86に装着しました。
営業車は一般道、高速、あぜ道、サーキット等、1ヶ月で平均3000km走行しますので、あらゆる道で様子を見たいと思います。
スプリングはHYPERCOを使用しています。今のところ異音や変な動きは出ていません。
後日、また様子をお知らせします。

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